09. 違い
(月刊ク-ヨン 2006年9月号より)
・はじめに
「一人の子供が、友達と殴り合いのケンカをしてしまいました。そしてその日の夜、彼はどうしても寝ることが出来ません。なぜでしょう?」
この質問を子供達にした場合、日本とアメリカで、面白いほど違う答えが返ってくるそうです。日本の子供達は「友達を殴ったことを後悔しているから」と答えます。しかしアメリカの子供達は...。
答えは後で紹介するとして、今回は様々な「違い」から、裏に隠れているものを探ってみましょう。
・国の中での「違い」
OECD(経済協力開発機構)が、7月に日本に対する経済報告書を作成しました。それによると、日本の相対的な貧困率は、現在、OECD諸国の中で最も高い部類に属しているとのこと。
この状況が生じた理由の一つとして、労働市場における「違い」の拡大を挙げています。全労働者の中でバイトやパートの占める割合が30%に増加(10年前は19%)したものの、彼や彼女等の時間あたりの賃金が40%程度にとどまっているからです。
また、バイトやパートが増えた原因として「高齢化」を指摘しています。国内の報道では、高齢化問題は、労働者不足や技術継承への悪影響だけが強調されています。しかし、高額の賃金が必要な高齢者をまかなうため、若者層の賃金が低くなるという状況を引き起こしています。「若者が高齢者を支える社会」とは一見良い言葉です。しかし、高齢者の生活を維持するためだけに、若者の生活や将来を無視するというのは問題かもしれません。
ところでこの報告書は、今後の日本は「海外労働者や女性の雇用拡大が必要である」と述べています。重要な視点ではありますが、彼等や彼女等を単なる「労働力」としてしかみていないような表現が気になります。
・国の外での「違い」
国と国との間では、「違い」はまた別な意味を持ち始めます。例えば、イタリア・ローマ法王の礼拝での発言に対して、イスラム諸国の人々が謝罪を求める暴動を起こしました(毎日新聞、9月16日)。法王は数日後に謝罪し、事態は解決したかに思われました。しかし、アルカイーダの理論的指導者とされるザワヒリ氏は、いまだに彼をペテン師呼ばわりしています(産経新聞、9月30日)。なお昨年10月、デンマークの新聞に掲載された風刺画に対して中東の人々が反発した問題もありましたが、覚えているでしょうか。
中東問題は、なかなか私たちには分かりづらいものがあります。両者の文化の「違い」を埋めることは難しいと考えた人も多いことでしょう。
ところがある中東問題専門家は、これは先進諸国の人々による中東支配の前触れだろう、と警告しています(朝日新聞、9月13日)。「彼等(中東の人々)はすぐ騒ぐ」→「非合理的で野蛮な人種だ」→「我々(先進国)が民主化しないと危険だ」という思考回路を私たちに作り、加害者性を隠そうとしているというのです(もちろん中東内部にも、市民の不満を国外に向けさせるため、暴動を扇動するということもあります)。「違い」をあえて浮き彫りにすることで、一般の人々を操ることが可能なようです。
そういえば靖国問題で、小泉元首相などが「個人の自由だ」と中国や韓国に対して発言していましたね。この風刺画問題では、先進諸国の人々も「表現の自由だ」といっていました。この共通点は偶然でしょうか...(ローマ法王はそんな発言はしていません)。
・おわりに
「違い」をなくすことが良い場合もあれば、そのままがよいこともあります。大切なことは、価値判断なく素直に「違い」を認めることかもしれません(例えば皆さんの子供達のように?)。
そうそう、クイズの答えを忘れていました。答えは、アメリカの子供達は「友達からの仕返しが怖くて眠れない」。先月アメリカに行ったとき、テロ防止策として歯磨き粉は機内持ち込み禁止!といわれました。軍事大国アメリカがこんなものを恐れているとは...。「違い」を理解するのは難しいですね。
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